2026年9月1日(防災の日)| 防災・社会
今日9月1日は防災の日だ。
1923年9月1日、関東大震災が発生してから103年。毎年この日、全国で防災訓練が行われ、ハザードマップの確認を促すニュースが流れ、「いざというときの備えを」というメッセージが繰り返される。
でも今年は、少し違う。
今年の日本は、訓練をする前に「本物」が来た年だった。
令和8年、何が起きたか
国土交通省の「災害・防災情報」ページを見ると、今年だけで驚くほどの数の報告書が並んでいる。
令和8年の主な災害記録として、台風第6号(6月)、台風第7・8号(6月)、山梨県東部・富士五湖の地震(6月)、台風第9号(7月)、令和8年熊本地震(7月28日)、台風第13号(8月)、令和8年8月千葉豪雨、台風第15号(8月)と、国土交通省だけで年初から8月までに10件以上の重大災害対応が記録されている。
その中でも特に大きかったのが2つだ。
令和8年熊本地震(7月28日)
7月28日16時27分、熊本県宇城市と八代郡氷川町で最大震度7を観測。国内で震度7を観測する地震は2024年1月の能登半島地震以来2年6か月ぶり。熊本県内では2016年以来10年3か月ぶりの震度7となった。
死者39人、避難者6,355人、断水3万4,780戸。そして台風13号・15号との複合災害——8月11日の記事で書いた通りだ。
令和8年8月千葉豪雨(8月13日〜)
線状降水帯が3度発生し、特別警報が発令された。死者10人、浸水1,500棟超。
2つの大規模災害が、わずか3週間以内に重なった。その間も台風が複数発生し続けた。
「防災の日」という制度の矛盾
ここで少し、斜めから考えてみたい。
防災の日は「訓練」と「意識啓発」のために設けられた日だ。でも今年の日本では、訓練が必要な前に本番が来た。熊本の被災者に「防災の日だから訓練しましょう」と言えるか。千葉の豪雨で自宅が浸水した人に「ハザードマップを確認しましょう」と言えるか。
これは防災の日という制度が悪いという話ではない。むしろ逆だ。
「訓練」と「本物」の距離が、今年ほど近かった年はない。だからこそ、今年の防災の日は例年より重い意味を持つ。
「訓練で学べること」と「本物でしかわからないこと」
能登半島地震(2024年元日)のとき、多くの人が驚いたことがある。
避難訓練では「地震が来たら机の下に潜る→揺れが収まったら避難場所へ」というシナリオが多い。でも能登では、道路が寸断されて避難場所に行けなかった。水が出なかった。携帯が繋がらなかった。真冬の元日に、暖房なしで夜を過ごすことになった。
訓練のシナリオには「その後」がない。でも本物の災害は「その後」が何週間も何か月も続く。
今年の熊本地震でも同じことが起きた。8月11日の記事で書いたように、断水は8月末まで続き、台風が来た。「地震が収まった後」の生活を、誰も十分に訓練していなかった。
「備え」の3つの段階
では、今日という日に何を考えるべきか。
防災の備えには3つの段階がある。多くの人が1段階目で止まっている。
第1段階:モノの備え
非常食・水・懐中電灯・救急セット——「防災グッズ」として語られることが多い段階だ。「3日分の食料と水」という目安は広く知られるようになった。
ただし、今年の熊本地震では断水が1か月以上続いた。「3日分」では全く足りない現実がある。また避難所に行けない人、ペットがいる人、医療的ケアが必要な人——モノの備えだけでは対応できない状況が必ず生まれる。
第2段階:情報の備え
自分が住む地域の「ハザードマップ」を確認したことがあるか。最寄りの避難場所だけでなく「第二・第三の避難場所」を知っているか。
今年の千葉豪雨では、想定外の地域が浸水した。「うちは大丈夫」という思い込みが、逃げ遅れを生む。
国土地理院の「地理院地図」や各自治体のハザードマップは、スマホで今すぐ確認できる。今日やることの第一候補だ。
第3段階:関係の備え
これが最も難しく、最も重要な段階だ。
今年の熊本地震での支援活動の記録を見ると、医療機関・薬局の被災状況、断水下での薬の確保、代行バスの運行——どれも「一人でできること」ではなく、地域の人間関係と情報共有があってこそ機能した支援だ。
「隣に誰が住んでいるか知らない」という状況では、災害時に助け合えない。高齢者・障がい者・乳幼児を抱えた家庭が、どこにいるかを地域が把握していなければ、取り残しが起きる。
防災の備えの最終段階は、モノでも情報でもなく「人とのつながり」だ。
「割れ残り」という言葉が示すもの
今年の熊本地震に関して、地震調査委員会がこんな言葉を使った。
日奈久断層帯などでは割れ残っている部分があり、将来的にそれらの地域で大きな地震が起きる可能性は十分ありうる」
「割れ残り」——断層が動き切っていない部分が、まだある。
これは熊本だけの話ではない。日本列島の地下には、無数の活断層がある。そのすべてが「いつか動く可能性がある断層」だ。
南海トラフ。首都直下。日本海溝。学者たちが「高い確率で起きる」と言い続けている地震が、まだ来ていない。
防災の日を「いつか来るかもしれない日のための準備」と思っている人は多い。でも今年の熊本地震は「いつか」が「今日」になった日を、現実として見せてくれた。
今日、5分でできること
最後に、具体的な話をしておく。
今日の防災の日に「何かをしなければ」と思っても、大がかりなことから始める必要はない。
今日5分でできること:
- スマホの緊急速報の設定を確認する(オフになっていないか)
- 自宅のハザードマップを開いて見る(国土地理院「地理院地図」または各自治体サイト)
- 家族に連絡を取る(「今日は防災の日だから」という口実でいい。もしものときの集合場所を確認する)
- 非常用持ち出し袋の中身を確認する(食料・水の賞味期限が切れていないか)
- 近所の高齢の方に声をかける(「こんにちは」だけでいい。存在を知ってもらうことが、いざというときの助け合いになる)
5番が一番難しくて、一番大事だ。
まとめ
- 今年2026年の防災の日は、熊本地震・千葉豪雨・複数台風と「本物の災害」が続いた後の9月1日
- 「訓練より本物が多かった年」だからこそ、今年の防災の日は例年より重い
- 「訓練のシナリオ」には「その後」がない——本物の災害は何週間も何か月も続く
- 備えには3段階ある:モノ→情報→人とのつながり。多くの人が1段階目で止まっている
- 熊本の断層には「割れ残り」がある。南海トラフも、首都直下も、まだ来ていない
- 今日できることは小さくていい。でも「今日」やることに意味がある
103年前の関東大震災の日に、日本人は毎年この問いを立てる。「もしも今日、それが来たら」——今年は例年より、その問いが現実に近い。
参考:国土交通省「災害・防災情報」(2026年)、気象庁「令和8年熊本地震ポータルサイト」、防災科研(NIED)「2026年度災害情報」、産業医科大学災害産業保健センター(2026年8月)、Wikipedia「熊本地震(2026年)」、大阪府「防災の日2026」(2026年8月25日更新)