サイゼリヤに見る、ネーミングセンス ~あの「◯◯風」には理由があった~

「サイゼリヤ」、それは私たちのお財布に優しく、本格的なイタリアン(風?)料理を提供してくれる、まさに食のテーマパーク。学生時代からお世話になっている方も多いのではないでしょうか。ふとメニューを眺めていると、あることに気づきませんか? そう、「ミラノ風ドリア」「パルマ風スパゲッティ」「辛味チキン」…あれ、「辛味チキン」はちょっと違いますが、とにかく「◯◯風」という名前の料理が多いこと!今回は、このサイゼリヤのメニュー名に隠された「◯◯風」の秘密と、その絶妙なネーミングセンスについて、深掘りしていきたいと思います。「◯◯風」に込められた、本場へのリスペクトとサイゼリヤ流の工夫「ミラノ風ドリア」と聞いて、イタリアのミラノに古くから伝わる伝統的なドリア料理を想像するかもしれません。しかし、実はドリアそのものが日本発祥の料理であることは、食通の間では比較的よく知られた話。ではなぜ「ミラノ風」なのでしょうか?諸説ありますが、 * ドリアに使われている**ミートソースがイタリアのボローニャ地方のもの(ボロネーゼソース)**であり、その近隣の大都市であるミラノの名前を冠した。 * ミラノ名物の**「ミラノ風リゾット」がサフランライス(黄色いライス)を使うことから、ターメリックライスを使用しているミラノ風ドリアもそのイメージを踏襲**した。といった理由が挙げられています。つまり、「ミラノ風ドリア」は、本場イタリアの食文化に敬意を払い、そのエッセンスを取り入れつつも、日本人の口に合うように、そしてサイゼリヤならではの工夫を凝らして生み出された、まさに**「サイゼリヤ流イタリアン」**の象徴なのです。この「◯◯風」という表現は、決して「なんちゃって」という意味ではなく、「本場のスタイルを参考にしつつ、私たちのオリジナリティを加えていますよ」というサイゼリヤからのメッセージと受け取ることができます。「パルマ風スパゲッティ」も同様に、パルマ産のパンチェッタやチーズをイメージさせつつ、日本人に馴染み深い味わいに仕上げられていますよね。そこには、本場の食材や調理法を完全に再現するのではなく、より多くの人に美味しく、そして手頃な価格で楽しんでもらいたいというサイゼリヤの想いが込められているのではないでしょうか。なぜ「◯◯風」? サイゼリヤの巧みな戦略サイゼリヤが「◯◯風」というネーミングを多用する背景には、いくつかの巧みな戦略が見え隠れします。 * 本場イタリアのイメージを効果的に演出 「ミラノ」「パルマ」といった地名が入ることで、私たちは自然とイタリアの風景や食文化を思い浮かべます。これにより、「本格的なイタリア料理を手頃な価格で楽しめる」というサイゼリヤのブランドイメージを強化しているのです。 * 「本場そのまま」ではないことの正直な表現 完全に現地のレシピを再現するとなると、コストも手間もかかり、結果として価格に反映されてしまいます。「◯◯風」とすることで、「本場のエッセンスは取り入れていますが、日本のお客様向けにアレンジしていますよ」という正直さを示し、期待値コントロールにも繋がっているのかもしれません。 * 親しみやすさと分かりやすさの両立 全く新しい創作料理名よりも、「◯◯風」とすることで、どんな系統の料理なのかがある程度想像つきやすくなります。これは、幅広い年齢層の顧客を持つサイゼリヤにとって、非常に重要なポイントです。 * コストパフォーマンス追求の表れ 本場の食材を全て輸入したり、伝統的な製法に厳密にこだわったりすると、あの驚異的な低価格を実現するのは難しいでしょう。「◯◯風」という言葉の裏には、美味しさを損なわずにコストを抑えるための様々な工夫と努力が隠されているのです。「◯◯風」は、もはや信頼の証長年にわたり多くの人々に愛され続けるサイゼリヤのメニュー。その「◯◯風」というネーミングは、もはや単なる「模倣」や「アレンジ」という意味合いを超えて、「サイゼリヤが自信を持ってお届けする、美味しくてリーズナブルな料理」という信頼の証になっているのではないでしょうか。そこには、本場への敬意、日本人の味覚への深い理解、そして何よりも「美味しいものを安く提供したい」というサイゼリヤの熱い情熱と企業努力が詰まっているように感じます。おわりに普段何気なく目にしているサイゼリヤのメニュー名ですが、少し立ち止まって考えてみると、そこには深い意味と企業の想いが込められていることが分かります。「ミラノ風ドリア」を一口食べれば、それはもうイタリア・ミラノの風を感じる(かもしれない)旅の始まり。サイゼリヤの巧みなネーミングセンスに思いを馳せながら、お気に入りの「◯◯風」メニューを味わってみてはいかがでしょうか。きっと、いつもとは違う新しい発見があるはずです。