2026年2月6日、X(旧Twitter)上で「#ママ戦争止めてくるわ」がトレンドランキング1位を獲得した。衆議院選挙の投開票日(2月8日)を2日後に控え、平和を願う有権者の声がSNS上で大きな広がりを見せていたことについて。
事実経緯
このハッシュタグは、作家でエッセイストの清繭子氏が2月5日、期日前投票を済ませた後にX上で「ママ、戦争止めてくるわ」と投稿し、「#期日前投票」のハッシュタグを付けたことから始まった。投稿は瞬く間に拡散され、多くのユーザーが「#ママ戦争止めてくるわ」に加え、「#パパ戦争止めてくるわ」「#おばちゃん戦争止めてくるわ」など、様々な立場から平和を願う投稿を行った。
このムーブメントに賛同したのが、「わたくし96歳」のアカウント名でX上で発信を続ける森田富美子氏である。森田氏は1945年8月9日、16歳の時に長崎で被爆し、両親と3人の弟を失った経験を持つ。90歳でXを開設し、91歳から原爆体験や戦争反対のメッセージを発信している。森田氏は清氏の投稿に連帯を表明し、自身のフォロワー8.9万人に向けて平和の重要性を訴えた。
今回の衆議院選挙では、憲法改正、防衛費の増額、平和外交のあり方などが主要な争点となっている。高市早苗首相は憲法改正に強い意欲を示しており、連立を組む日本維新の会も同様の立場だ。自民党と維新の会が改憲勢力として3分の2の議席を獲得する可能性も報じられている。選挙期間中には、ある候補者が「場合によっては血を流していただかないといけないこともあるかもしれません」と発言し、物議を醸した。
指摘される問題点
このムーブメントについて、政治学者らは「若年層や女性の政治参加を促す効果がある」と評価する一方、「感情的なメッセージに偏り、具体的な政策議論が不足している」との指摘もある。
自民党の鈴木貴子氏は7日、「『事実で選ばせる情報』が必要」とコメントし、有権者が感情ではなく事実に基づいて投票することの重要性を強調した。また、SNS上では賛同の声が多数を占める一方で、「政治的発言のハードルを下げすぎている」「分断を招く恐れがある」との慎重な意見も見られる。
「戦争を止める」という目的と「投票する」という手段の間に、具体的な政策選択のプロセスが欠如しているとの批判もある。どの政党・候補者を選べば平和が実現するのか、その判断基準が明示されていない点が課題として挙げられている。
期待される効果
一方で、本ムーブメントには複数の肯定的効果も認められる。第一に、従来投票率が低い傾向にあった20-40代女性層の政治参加を促進する効果である。母親というアイデンティティを通じて、政治的アクターとしての自己認識を獲得した点は評価できる。
第二に、複雑な安全保障政策を分かりやすい形で提示し、政治的リテラシーが十分でない層にも争点を理解可能にした点である。第三に、SNSの双方向性を活用し、ボトムアップの政治的意思表示を可視化したことで、代議制民主主義を補完する直接民主主義的要素として機能する可能性がある。
清氏は7日、「政治的発言なんて大きなことじゃない。大切な家族、大切な推し、大切なペット、大切な自分のために投票することが大切」とX上で述べ、投票行動を呼びかけている。
今後の展望
2月8日の投開票日を前に、このムーブメントが実際の投票率や選挙結果にどの程度影響するかが注目されている。選挙管理委員会の関係者は「期日前投票の数は前回比でやや増加傾向にある」としているが、このハッシュタグとの因果関係は不明だ。
SNSを通じた有権者の自発的な政治参加の新しい形として、今後の動向が注視される。投開票結果と、このムーブメントの相関分析は、デジタル時代の民主主義における重要なデータとなるだろう。
