2026年2月13日のニューヨーク外国為替市場で、ドル円は1ドル=152円台後半まで急落しました。米国の1月消費者物価指数(CPI)が市場予想を下回る伸びとなったことでFRBの利下げ期待が再燃し、5日連続の円高進行となりました。衆院選後のポジション整理や高市政権の財政政策への注目が続く中、日米金融政策の方向性の違いが鮮明になっています。
何が起きたか:主要通貨ペアの動向
USD/JPY(米ドル/円)の急激な円高
ドル円相場は2月13日のニューヨーク市場で前日比10銭円高・ドル安の1ドル=152円65~75銭で取引を終えました。これは5日連続の円高進行で、1月下旬には158円台後半まで上昇していた水準から約5円以上の円高となりました。
この急落の背景には、2月13日朝に発表された米国の1月消費者物価指数(CPI)があります。総合CPIは前年比2.4%上昇と、前月の2.7%から鈍化し、市場予想の2.5%も下回りました。また、変動の大きい食品とエネルギーを除くコアCPIは前年比2.5%上昇と、前月の2.6%から鈍化し、2021年3月以来の最小の伸びとなりました。
その他の通貨ペアの動向
ユーロは1ユーロ=1.1863~73ドル、181円20~30銭で推移しました。欧州中央銀行(ECB)は2月上旬に5会合連続で主要政策金利を据え置き、預金金利を2.0%に維持しています。
ポンド円は208円台、ポンドドルは1.36ドル台で推移し、英国の経済成長が上半期にやや加速する見通しの中、安定した動きを見せています。
何が問題なのか:市場を動かす要因
日米金利差の縮小
今回の円高の最大の要因は、日米の金融政策の方向性が大きく異なることです。米国のインフレが予想以上に鈍化したことで、市場は年内にFRBが2回程度の利下げを実施するとの期待を強めています。一方、日本銀行は1月22-23日の金融政策決定会合で政策金利を0.75%で据え置きましたが、植田総裁は「経済・物価の見通しが実現していくとすれば、引き続き政策金利を引き上げ、金融緩和度合いを調整していく」と利上げ継続の姿勢を明確にしています。
この日米金利差の縮小期待が、ドル売り・円買いの大きな要因となっています。
日銀の金融政策正常化の進展
日銀の植田総裁は1月26日の記者会見で、金融政策正常化は「まだ始まったばかり」と述べています。市場関係者の間では、日銀が2026年に4月と10月の2回、追加利上げを実施するとの予想が有力です。
また、展望レポートでは物価見通しを概ね維持しながらも、基調的な物価上昇率が緩やかに上昇していくとの見方を示しました。これは、賃金と物価が相互に参照しながら緩やかに上昇していくメカニズムが維持されるとの判断に基づいています。
高市政権の財政政策と為替介入警戒
2月8日の衆院選で与党が絶対安定多数を獲得した高市政権ですが、積極財政への本気度や具体的な政策内容について市場は引き続き注視しています。財務省の片山大臣は「金融市場には万全の注意を払っている」と述べており、為替介入への警戒感も相場の方向性を左右する重要な要因となっています。
実際、1月下旬には円が159円台後半から一気に7円程度円高が進む場面があり、当局による「レートチェック」(為替介入の準備段階)の実施が観測されました。財務省が公表した2025年12月29日~2026年1月28日の期間には為替介入は実施されていませんでしたが、市場の警戒感は依然として高い状況です。
長期金利の急上昇
日本の長期金利はかなり速いスピードで上昇しており、市場では、先行きの経済・物価情勢や財政政策、金融政策に関する見方が影響しているとの声があります。加えて、年度末要因で超長期債の需給が不安定化しているという指摘もあります。
今後の見通し:注目すべきポイント
FRBの金融政策スタンス
市場は今回のCPI低下を受けて、FRBが「安心して利下げできる」状況になったとの見方を強めています。ただし、労働市場の強さが続いていることから、短期的な利下げを正当化するには不十分との慎重な見方もあります。
専門家の間では、「FRBの利下げ局面は既に終了している」との見方もあり、今後発表される経済指標次第で政策見通しが大きく変わる可能性があります。市場の先物市場では年内2回の利下げを織り込んでいますが、実際の政策運営は必ずしもその通りにならない可能性もあります。
日銀の次の利上げタイミング
市場関係者やエコノミストの多くは、日銀の次の利上げは2026年4月が有力とみています。4月は春闘の結果が明らかになり始める時期であり、賃金上昇がどの程度物価に転嫁されるかを見極める重要な判断材料となります。その後、10月にもう1回の利上げを実施するというシナリオが想定されています。
ただし、このペースは現実的には若干遅いとの指摘もあり、本来であればもう少し積極的な利上げが望ましいものの、政権との関係を考慮すると、急ピッチでの利上げは困難との見方もあります。
為替水準の今後の方向性
専門家の見解では、基本的には円安基調が継続し、2026年末には165円程度まで円安ドル高が進行する可能性があるとの予想もあります。ただし、これは165円で反転するという意味ではなく、当局による介入が実施される可能性を考慮した予測です。
一方、日銀が政権との関係を度外視して積極的な利上げを実施する、あるいは長期金利上昇を容認する姿勢を明確にする場合は、さらなる円高方向に動く可能性もあります。
週明け以降の注目材料
来週以降、市場が特に注目するのは以下のポイントです:
- 2月18日に発足予定の第2次高市内閣の組閣内容
- 2月25日頃に提示される見通しの日銀審議委員の人事案
- 1月29日から2月25日までの為替介入実績(2月27日公表予定)
- 3月の米国経済指標(雇用統計、CPI等)
- 4月の春闘結果と日本企業の価格改定動向
まとめ
- 米国1月CPIが予想を下回る2.4%上昇となり、ドル円は152円台まで急落(5円以上の円高)
- FRBの利下げ期待が再燃する一方、日銀は利上げ継続姿勢を維持し、日米金利差縮小が円高要因に
- 高市政権の財政政策スタンスと為替介入への警戒感が市場の方向性を左右する重要な要因
- 日銀の次の利上げは4月が有力視され、春闘結果と企業の価格転嫁動向が焦点
- 中長期的には円安基調が続く可能性も、日銀の積極的な利上げがあれば円高シナリオも
免責事項
本記事は情報提供を目的としたものであり、特定の投資行動を推奨または勧誘するものではありません。為替取引にはリスクが伴います。投資判断は必ずご自身の責任で行ってください。記事の内容は執筆時点での情報に基づいており、その正確性・完全性を保証するものではありません。
