住宅ローンの知恵

何かと相談の多い住宅ローンについてのお話。 改めて、認識を整理しましょう。

①返済期間  
よく聞く言葉ですが、「家賃なみ」とか「無理なく返済できれば」といったワード。 総返済額で考えてみましょう。 元金+利息がいくらになるのか、考えましょう。
すなわち、返済期間を伸ばすと、月々の返済額は減りますが、その分利息も増えます。
返済総額>返済期間賃貸に住んだ場合の家賃総額 であれば決して、「家賃なみ」ではないことに注意しましょう。

②販売会社の言いなり35年ローン
購入前に見積もりを取ると、必ずと言っていいほど35年ローンで計算されます。
1月当たりの返済額を低く抑えるため=「家賃なみ」のカラクリです。
少しでも年数は短い方が、総返済額は少ないので、そこを検討して、35年としないでください。
35年返済の月々の返済額>月々の手取り額の30% となった場合、オーバーローンの可能性が高いです。

③具体例での検証
例えば4000万円、フラット35固定金利1.3%で借りた場合、35年間の利息は980万円ほどになるため、総返済額は4980万円ほどになります。
これを30年返済とした場合、利息が832万円、すなわち148万円減少します。総返済額は4832万円ほど。
月々の返済額は、35年返済で11万8593円(4980万円÷35年÷12月)、30年返済で13万4242円と期間が短い分、月々の返済額は増加します。 
家計をよく見て手取りの30%以下になるようにコントロールしてください。
ローンを組む前に計算できれば良いのですが、なかなか難しいです。

④繰り上げ返済効果
35年返済でローンを組んだ後、繰り上げ返済で、総返済額は減らすことができます。
繰り上げ返済には2種類のパターンがあります。
「期間短縮型」 残りの返済期間を短くするものです。月々の返済額に変動はありませんが、返済期間を短くすることで、総返済額を減らすことができます。こちらの効果が見込めるのは、借りてから早い段階での実行や金利が高いものになります。
「返済額軽減型」 月々の返済額を減らす方法です。返済期間は変わりませんが、毎月の返済額を減らせる分、家計にゆとりができてきます。

⑤繰り上げ返済はまとまった金額が必要かどうか
住宅ローンは、残高に対して利息がつくため、返済が進めば残高が少なく利息も減っているため、繰り上げ返済は、早めに実行した方がその効果が大きいことがわかります。
とはいえ、早い段階で、繰り上げ返済ができるほどのまとまったお金がないということをよく耳にします。 以前は、繰り上げ返済手数料というものが存在していたため、手数料と利息軽減との効果を計算すると、ある程度まとまった金額がないと意味のないものでした。
しかし、最近では繰り上げ返済手数料無料の金融機関が増えていることや、少額からの返済も受け付けているため、検討の余地は大きいです。それも前述のとおり、早い段階から実行していくことをお勧めします。

⑥住宅ローン控除との関係
こちらもよく聞く話です。 「住宅ローン控除があるから10年間は繰り上げ返済しない方が良い」というワード。これは全くの認識不足だと思います。人それぞれ異なります。
1.そもそも住宅ローン控除は年末借入金残高の1%と言われております
ここで重要なのが借入残高上限が新築・未使用の場合4000万円(控除税額は40万円)であること。
すなわち借入残高が5000万円であっても控除税額は40万円であること。なので、こういう方は早めに1000万円を返済した方が総返済額を少なく抑えることが明白です。
2.中古住宅の場合を個人の売主から購入する場合
上限が借入残高2000万円までとなっているため、早期に繰り上げ返済した方が、控除税額よりお得です。
3.いくら納税しているかによる
4000万円の1%で40万円が戻ってくると考えている方もいらっしゃいますが、これは間違いです。納税した額が限度となるので、仮に所得税・住民税で30万円納税している方は、30万円が限度となります(所得税で戻しきれない分は住民税から上限付きで戻る)
すなわち 住宅ローン残高の1%>納税額 の場合、早めに繰り上げ返済をした方がお得になります。
4.金利1%以上の場合
当然ながら、支払利息1.3%>税額控除1パーセント の場合 利息軽減を考えると早期の繰り上げ返済が有効です。

⑦繰り上げ返済と住宅ローン控除の関係での注意
住宅ローン控除の適用要件に、返済期間が10年以上という条件があります。なので、期間短縮型で繰り上げ返済を行うと、場合によっては返済期間が10年を切ってしまう場合があります。 このような場合、住宅ローン控除自体も打ち切りとなるので、注意が必要です。このような場合は、返済額軽減型を選択しましょう。

最後に、現在の低金利のもとで高額なローンが組みやすくなっております。低金利だからこその固定金利での借り入れを選択するのか、変動金利を選択して恩恵を受けるのか、判断に悩むところです。ライフバランスをしっかり見据え、柔軟に対応できるような余裕を持った計画を立てることが重要となります。
不動産を買ったつもりが、「負動産」とならないように。。

うまいことオチましたかね(笑)